第1回助成事業 助成団体へのインタビュー。活動に対する想いをお聞きしました。(アルピョンこどもの家)
こんにちは、サンクゼール財団です。
2025年12月21日に、第1回助成団体の一つ「アルピョンこどもの家」(長野県大町市)を訪問しました。
学校に行きにくいと感じる子どもたちの居場所づくりから始まり、今ではフリースクールと月1回の地域食堂を柱に、自由でいられる時間と食を囲むつながりを丁寧に育んでいます。
今回の取材では、活動に込めた思い、子どもたちの変化、そして地域に根づく居場所のかたちを伺いました。
本記事では、その昨年末の訪問の様子をレポートします。
アルピョンこどもの家 概要

【主な活動地域】
長野県大町市
【開催日時・活動内容】
毎週火曜日(フリースクール)、地域食堂(月1回)
【お話をお聞きした人】
川崎陽子さん(アルピョンこどもの家 代表)
安心して過ごせる、小さな居場所
長野県大町市。北アルプスの山並みがすぐそばに迫る、雄大な自然に抱かれた地域です。
そんな自然に囲まれた古民家で、「アルピョンこどもの家」は活動しています。

ここでは、毎週火曜日にフリースクールを、月に1回は地域食堂を開催し、子どもたちを中心に地域コミュニティがゆるやかにつながる場を育んでいます。
サンクゼール財団が訪れた日は、ちょうど地域食堂のクリスマス会。
絵本の読み聞かせに始まり、楽器の演奏会、続いてフリーマーケットとイベントが盛りだくさんです。
フリーマーケットの出店者はなんと子どもたち自身。「得意なこと」「やりたいこと」をそのまま形にしたお店が並びます。


出店するかどうかも、売るものも、すべて子どもたちの自由。
ただ食事を提供するだけでなく、「挑戦してみたい」という気持ちが自然にあふれ出る体験の場があることに、心がほっとあたたかくなります。
サンクゼール財団の助成で購入されたという炊飯器と二段オーブンも見せていただきました。

毎回自宅で炊いては会場に持ち込んでいたそう

効率よく、美味しく焼きあがります
「クッキーやピザづくりは子どもたちに大人気です。トースターでは1枚ずつしか焼けなかったピザも、二段オーブンで一度に焼けるようになって、活動の幅がぐっと広がりました。」と、代表の川崎さん。
子どもたちの笑顔が目に浮かぶような、うれしい言葉でした。
会場を包むのやわらかな空気と、子どもたちの伸びやかな声。そのすべてが、この場所が安心して過ごせる居場所として育まれていることを物語っていました。

子どもも親も、リラックスして過ごせる居場所でした
自分のペースで表現を
活動終了後、代表の川崎さんにお話をお聞きしました。
――本日はありがとうございました。まず、以前から気になっていたのですが、「アルピョン」という名前にはどのような意味があるのでしょうか?
川崎さん:不思議に思いますよね(笑)。これは、活動を始めた当初のメンバーのインスピレーションなんです。
「歩くような速さで」「あるがままを認める」「存在=ある」といった意味を込めた「アル」に、あるときふっと「ピョン」と前に進むイメージを重ね合わせて、「ピョン」を組み合わせました。
――なるほど、かわいらしくてすごく印象的な団体名だと思っていました。そんなアルピョンこどもの家の活動を始めたきっかけを教えてください。
川崎さん:『学校に行けていない子どものためにフリースクールを開いてほしい』という保護者からの相談がきっかけです。
私自身、中学校教員や保育士として働いてきたことや、療育センターで知的障がいの子どもたちと関わってきた経験もあり、「子どもに関わることが好き」という思いが背中を押して、大町市・美麻地区で活動を始めました。
最初は自宅を活用した小さな場で、通う子は小学生2人だけ。それが口コミで広がり、小学生から中学生まで14名になりました。
赤ちゃんを連れたお母さんが訪れることもあって、多世代が自然につながる様子を見て、「こういう関わりが子どもたちの心のバランスを整えてくれるんだ」と実感しましたね。
その後、現在の拠点に移ってからは、特に芸術や制作活動に力を入れています。美麻での活動時は薪割りや野山を歩き回る活動が中心でしたが、今の子どもたちの興味や性格に寄り添う中で、表現活動が自然と軸になっていきました。
フリースクールに関わってくれている、みやらびさん(絵と詩のアーティストであり、不登校経験を持つピアサポーター)の存在も大きいです。自分のペースで表現できる場が自然に広がったと思います。
子どもの「自由」をどう支えるか
――活動のなかで生まれた変化はありますか?
川崎さん:ここで友達と交流することで、子どもたちの表情が明るくなっていくことですね。子どもたち一人一人の成長を感じられることが嬉しいです。
アルピョンこどもの家には、プログラムなどは特にないんです。
私自身も、「こうあるべき」という大人的な視点の刷り込みがありましたが、全部子どもたちに駄目だしされて。言葉では言わないものの、『それは違うよ、大人!』って(笑)。
子どもの世界ではこうなんだよ、というのを見せてもらって、子どもたちから多くの気付きをもらっています。だからアルピョンには、外から見たらびっくりされるくらいの自由さがあります。
――子どもたちは基本的に、自由に過ごしているのでしょうか?
川崎さん:そうですね、絶対に指図はしないです。
見守って、観察して、やりたいことを尊重する…という姿勢を大切にしています。
とはいえ、学校的な枠組みに慣れている子どもほど「本当の自由」に戸惑ってしまう。そのため、大まかなテーマを設けて制作することもあります。最近は、クリスマス飾りやこいのぼりづくりなど、季節のイベントをテーマにものづくりをしました。
――これからやってみたいことや展望はありますか?
川崎さん:保育園から小学校に上がるときにつまずいてしまう子や、不安を抱える親御さんが多いんです。
だからこそ、年齢で区切らずに一緒に過ごせる、インクルーシブスクール(障がいの有無や年齢に関わらず、誰もが共に学ぶ場)のような場が地域にできたらいいなと思っています。大人はあくまでファシリテーターで、主役は子どもたちという形ですね。
そしてもうひとつ、地域の年配の方との関わりをもっと増やしたいです。子どもの声を聞くだけで、元気になるというデータもあるんですよ。
おわりに
「食卓を囲むと、子どもたちの輪が自然に生まれます。同じものを食べて、同じ時間を過ごすと、安心して本音がこぼれる瞬間があるんです。」
『”食”の持つ力』について、川崎さんはそう語っていました。
食を大切にしたフリースクールを開催しているアルピョンこどもの家。その言葉を聞き、この場所の温かさの理由が少しわかったような気がしました。食は単なる栄養補給ではなく、子どもたちの気持ちにも深く働きかけるもの。食事という行為そのものが、子どもの心と体を育んでいくのだと改めて感じました。
この場所から、子どもたちの伸びやかな声と、あたたかな笑顔が地域に広がっていきますように。
サンクゼール財団は今後も助成事業を通じて、こうした地域の居場所づくりを支援してまいります。

