「楽しかった、また行きたい!」笑顔溢れる子ども食堂(小布施町 かえで通りこども食堂 みんなの家)
こんにちは、サンクゼール財団です。
サンクゼール財団では、活動の第一歩として子ども食堂団体への訪問を行っています。
“子ども食堂”と一言で言っても、その活動内容は団体により様々。運営状況やお困りごとなどをヒアリングし、現場の意見を大切にした助成事業を立ち上げるべく、長野県内の子ども食堂へお伺いし調査を行っています。
2025年2月に、長野県上高井郡小布施町の子ども食堂「かえで通りこども食堂 みんなの家」様(以下、敬称略)へ訪問させていただきました。
幅広い方々を対象に趣向を凝らしたイベントを行う、かえで通りこども食堂 みんなの家の活動の様子をレポートします。
かえで通りこども食堂 みんなの家 概要
会場:長野県上高井郡小布施町851番地(特定医療法人新生病院敷地内 スタートハウス)
開催日時:毎月第1金曜日 17時30分~受付開始、20時食事終了
主な活動内容:食事の提供(バイキング形式)
参加費:大人300円、子ども(学生)無料
時間勝負!彩り豊かな食事の準備
受付開始に先立ち、15時30分ごろから準備がスタートします。
この日のメインメニューは三色丼とビビンバ丼。
そのほかにも里芋の煮物、マカロニサラダ、みそ汁、ゴボウチップス、汁物、さつまいも蒸しパンなどなど、ボランティアさんの手によって次々と準備が進められていきます。
「地元の農家さんに食材を寄付いただけるので、無駄の無いように献立を考えています。」とのことですが、品目の多さにまず驚きです。


迫りくる受付開始時間に、「砂糖の分量、どうしよう!?」「○○買い忘れた!」という声が飛び交うキッチン。
慌ただしくも、どこか楽しげな雰囲気です。
野外でも何やら準備が行われています。


大きな寸胴鍋に湯切りザル……!?これは一体何の準備でしょう…?
準備にあたるボランティアさんに尋ねると、なんと、ラーメンの準備とのこと。麺は地元の製麺会社さんから提供いただいたものだそう。
トッピングはセルフサービスで、自分好みのアレンジを楽しむことができます。
過去には野外で流しそうめんや、ピザを焼いたこともあるんだとか。なんだかお祭りのような雰囲気です。
「毎回参加者がとても多く、会場のキャパシティが溢れてしまって。何とか会場外に人を流すために、野外でも食事の提供を行うようになりました。」と語るのは、かえで通りこども食堂 みんなの家の発起人である久保寺さん。
なるほど、状況に応じた工夫のひとつなのですね。
笑顔溢れる食事の風景
あっという間に時間が経ち、いよいよ受付開始の時間になりました。
会場内の廊下にはずらりと色とりどりな料理たちが並びます。主菜・副菜・汁物、そしてデザートまで、本当に品数が豊富…!
参加者は受付を済ませたあと、各々バイキング形式で料理を皿に盛り付けます。
スタートと共に、あっという間に会場内は人でいっぱいに。「すごい!おいしそう!」「これ食べたい!」という弾んだ声が響きます。

今回は途中までの見学でしたが、小さな子どもからおじいさんおばあさんまで、幅広い年代の方々が集い、食べたり遊んだり…と思い思いに過ごすことができる空間でした。
“子ども食堂ってどんな場所なのだろう…?”と身構えていたこちらが拍子抜けするほど、温かな雰囲気で自由に過ごせる空間でした。
運営者へのインタビュー
準備の時間に、かえで通りこども食堂 みんなの家の発起人であり、企画運営を行う久保寺さんにお話をお聞きしました。
―― 子ども食堂を開始した経緯やきっかけ、想いについて教えてください。
久保寺さん:かえで通りこども食堂 みんなの家は2024年7月5日に初回開催しました。
核家族化やコロナ禍もあり、“みんなで食べるごはん”の機会が減ってきていると感じていたことがきっかけのひとつ。
もうひとつは、”誰でも、どこに住んでいる人でも予約をせずに気軽に行ける子ども食堂”を作りたいという思いがありました。
そこで有志と共に立ち上げたのが、「かえで通りこども食堂 みんなの家」です。
―― 平均の参加人数が100名/回と、非常に多くの方に利用されているのですね。当初からこの人数を想定されていたのですか?
久保寺さん:初回の開催は『60名程度の参加かな?』と見込んでいました。
ですが、蓋を開けてみると初回から100名を超える参加者が…(笑)。
「子ども食堂をやるんだって!」という情報がママ友の間で広がり、たくさんの方が来てくださったようです。
回を重ねるにつれ、子どもたちの間でも「楽しかった!」という口コミが広がっているようで、子どもにせがまれて親が連れてきた…というケースも出ています。
生活が苦しい世帯の助けとなる活動をしたい一方、対象を区切るとかえって逆効果とも考えています。
なので、かえで通りこども食堂 みんなの家は幅広い方々に参加していただける空間としています。
―― 運営面はどのような体制で対応されていますか?
久保寺さん:新生病院に勤務する有志スタッフを中心に、企画運営をしています。また、地元のボランティアの方々にも参加いただき運営しています。
業務の傍ら開催しているのと、1回の参加者が多く企画運営が大変なため、開催頻度を増やすことは考えられていないのが現状です。
バタバタと準備に追われ、なんとか乗り切った!と思ったらもう次回の開催が目前…という状況です(笑)。
―― 提供している食事のこだわりなどを教えてください。
久保寺さん:季節に合わせたメニューを意識して献立を考案し、バイキング形式で提供しています。
私自身、母親として感じるところですが、子どもの好き嫌いは本当に幅広くて。
なるべく子どもが好きなメニュー、かつバイキング形式にすることで、楽しい食事の機会になるようにしています。
あとは主菜、副菜、汁物、デザートを準備することを心掛けています。
―― 活動を通じて、参加者からの声はありますか?
久保寺さん:「夕食を考えたり、作る必要が無くなりありがたいです。子ども達も、友達と遊べて楽しそう。」という声を頂きました。
子育て世帯にとっては、一週間の疲労がピークに達する金曜夜に開催することで、束の間の息抜きや親同士の交流の場にもなっているようです。
あとは、「友達と一緒に食べるからなのか、普段食べないものも食べてくれる。」「品数が豊富でありがたい。」という声もいただいています。
―― 活動を通じて、生まれた変化や気づいたことはありますか?
久保田さん:今の子ども達は、コロナ禍での「黙食」が当たり前で育ってきています。
人がワイワイ集まる空間での食事は、自然と会話が生まれて食事の楽しさを知る機会になっていると思います。
また、子ども食堂を利用する親同士の交流の場にもなっていることを受け、カフェスペースを増やしました。
食事後、子ども達が遊んでいる間、コーヒーやお菓子を楽しみながら、子育ての悩み相談を行えるようにしています。
―― 今後の計画や、やってみたいことがあれば教えてください。
久保寺さん:現状は、月1回の開催でいっぱいいっぱい。ですが慣れてきたら、「おとな食堂」も開催してみたいと考えています。
普段頑張っている子育て世代を対象に、大人がゆっくりと落ち着ける空間を作りたい…というか、自分が欲しいんです(笑)
他には、今後は高齢者のボランティアを募っていきたいなと考えています。
まとめ
かえで通りこども食堂 みんなの家の活動の様子は、子ども会のような雰囲気。
子どもにとってはちょっとした非日常、大人にとっては日々のガス抜きができる場所でした。
特に印象的だったのは、参加者の方々が本当に楽しそうに食事をされていたこと。
バイキングや野外の食事など、家では出来ない体験のワクワク感が「また行きたい!」というポジティブな感想につながっているのだと思います。
何よりも、久保寺さんご自身が働く親の目線で「あったらいいな、助かるな」という要素を取り入れている事が、多くの方々に利用されている理由だと感じました。
子ども食堂は「子どもの貧困対策」を目的として生まれ、全国に広がりました。
一方で、最近では「地域交流、多世代交流の拠点」「居場所づくり」の側面が注目されています。
「子ども食堂=困っている人が行く場所」というネガティブなイメージではなく、誰でも利用可能で、楽しい場所というイメージに徐々に切り替わりつつある段階なのです。 かえで通りこども食堂 みんなの家の見学を通して、幅広い世代の方々の交流の場となる子ども食堂の在り方を実感しました。