第1回助成事業 助成団体へのインタビュー。活動に対する想いをお聞きしました。(てんぐカフェ)

こんにちは、サンクゼール財団です。
2025年10月11日に、令和6年度助成団体のひとつ「てんぐカフェ」(長野県上水内郡飯綱町)を訪問しました。

てんぐカフェの副代表であり、立ち上げ当時から活動に携わる寺島さんに、飯綱町の子ども食堂ならではの課題とそれに対する工夫、またサンクゼール財団の助成金がどのように活用されているのか、お話をお聞きしました。

てんぐカフェ 概要

【主な活動地域】
長野県上水内郡飯綱町

【開催日時・活動内容】
毎月第2土曜日または第4土曜日に、定期的な子ども食堂を月1回開催。
定期開催に加えて、「子どもだけで歩いて行けること」をコンセプトにした、出張版子ども食堂 歩いて行こうてんぐカフェ を、飯綱町の3地区にて開催。土日祝日や長期休み期間を中心に、年6回実施している。

【お話をお聞きした人】
寺島恵子さん
:てんぐカフェ副代表。てんぐカフェ発足時から活動に携わり、子ども食堂を起点にした地域のつながりづくりに取り組む。

てんぐカフェのはじまり

寺島さん:2018年に、飯綱町社協の呼びかけでスタートしたのがきっかけです。
私自身が参加しようと思ったきっかけは、自宅で農家民泊をしていた経験からでした。都会から子どもたちが泊まりにくるのですが、食事の時間がとても好評だったんです。みんなで食卓を囲んでおしゃべりしながら、1時間以上もかけて食事する…なんてこともありました。

「どうしてこんなに喜んでくれるんだろう?」と不思議に思い、子どもたちに聞いてみると、「家族で食事を食べることが少ない。誰かと一緒に食べると楽しい」と話してくれました。ひとりで食事をとることが多く、民泊での食事の体験が新鮮だったようです。
はじめは都会の子どもたちだけの話かと思いましたが、核家族や共働きが当たり前になった今、地方でも同じ状況が広がっているのではと感じました。
そんな気づきから、みんなで食卓を囲む場を地域の中でつくりたいと思い、てんぐカフェに携わることを決めました。

寺島さん:そうですね。コロナ禍もあり、思うように活動できない期間もありましたが、工夫を重ねて活動を続けてきました。
それと、てんぐカフェでは「郷土の伝統食や、季節や行事に合わせた食事を提供すること」も大切にしています。この取り組みも、民泊での気づきがきっかけです。

民泊では、私の家で採れた野菜や、近所の山で採れた山菜を食事に出していたんです。はじめの頃は「今の子どもたちは、山菜なんて食べてくれるのかしら…」なんて思いましたが、無用な心配で(笑)。みんな、とっても喜んで食べてくれたんです。
その時に、「嫌いだから食べないんじゃなくて、口にする機会がないだけなんだ」と気づきました。これも、もはや都会だけの問題ではないですよね。
そういった経験から、食べる機会が減ってしまった伝統食や季節の食べものを、子どもたちに伝えていきたいと思い、てんぐカフェでも提供するようにしています。

今の子どもたちに合わせたアレンジも加えています。例えば、おやきにじゃがいもとチーズを入れたり、かぼちゃをソテーやスープにしてみたり。ボランティアのみんなでアイデアを持ち寄って工夫しています。

ボランティアの手によって一品一品が丁寧に作られていきます。
どれも、「子どもたちに喜んでほしい」という想いが込められたメニュー。
時間に追われながらも、キッチンには笑い声が響き、温かな空気が流れています。

2つの柱ーー月1回の定期開催と、出張版子ども食堂

寺島さん:月1回の子ども食堂は、飯綱町多世代交流施設メーラプラザで定期開催しています。こちらは食事提供がメインで、小さなお子さん連れのご家族が多く参加されます。
一方で、飯綱町は広くて山間部も多く、子どもだけではメーラプラザに通うのが難しいという課題がありました。そこで、出張版子ども食堂「歩いて行こうてんぐカフェ」を始めたんです。

現在は、飯綱町の3地区(古町・福井団地・芋川)で開催されています。
「子どもだけで歩いて行けるように」という想いがあるので、通いやすい場所の公共施設を会場にしています。
また、「歩いて行こうてんぐカフェ」は、食事提供だけでなく、料理体験も交えた活動であることも特徴です。「おやき」、「やしょうま(米粉のお団子)」などの郷土料理や、ピザやカレー、手巻き寿司といった子どもが大好きなメニューを取り入れるといった工夫をしています。

寺島さん: とにかく、「てんぐカフェが、子どもたちにとって身近な存在になってほしい。気軽に立ち寄れる場所になってほしい」という想いがあります。
今年、飯綱町の子どもたちを対象に、こどもアンケートが実施されたんです。その結果から見えてきたのは、「放課後や休日は自宅で過ごす子が多い一方で、自宅に居心地の悪さを感じている子もいる」という現状です。
この結果を受けて、家庭や学校以外にも、子どもたちが安心して過ごせる居場所が必要だと強く感じました。

もうひとつの課題としては、公民館の活用頻度が減り、若い人や子どもたちにとってなじみのない場所になりつつあるということ。
せっかく会場があるのに、もったいないですよね。だからこそ、「歩いて行こうてんぐカフェ」の活動を通じて、公民館が地域の交流拠点として再び活用されることを目指しています。

食べることをきっかけに、会話が生まれ、人と人とのつながりが育まれていく。そんな温かい場を、地域にもっと広げていきたいです。

この日のデザートには、旬のシャインマスカットと飯綱町産のりんごが提供されました。
「果物は高価で手に取りづらいけれど、こうして提供できると子どもたちも喜んでくれる」と寺島さん。

地域の記憶になる子ども食堂を目指して

寺島さん: そうですね。ここ最近、「親子のつながりが強くなる一方で、地域とのつながりが弱まり、地元への愛着が薄れてきているのではないか」という危機感を持っています。
だからこそ、子どもたちに「ここが自分のふるさとなんだ」と少しでも感じてもらえるように、地域に根ざしたイベントづくりに取り組んでいます。

てんぐカフェでいろんな人と出会うことで、「親だけじゃなく、地域にはこんな人たちがいるんだ」と子どもたちに感じてもらえたらいいなと思います。
あとは、大きくなったときに、「そういえば、てんぐカフェでご飯を作って食べたな。楽しかったな」と懐かしく思い出してもらえるような、地域の記憶の一部になれたらと思います。
たとえ地元を離れることがあっても、そんな思い出があれば、お祭りのときなんかに帰省してくれるんじゃないか――なんて期待もしています(笑)。

あとは、そうですね…。最近はありがたいことに、飯綱町に移住してくれる方も増えています。
今後は子どもだけではなく、その親御さんも巻き込めるような企画をもっと増やしていきたいですね。
親子で楽しめる手作り教室みたいなことができるといいな、と思っています。お味噌やこんにゃく、漬物、お豆腐…やってみたいことがたくさんありますね。

助成金の活用について

――サンクゼール財団の助成金の使い道について、教えてください。

寺島さん: サンクゼール財団から助成を受けられて、本当に安心しました。
長野県内でも、子ども食堂の数は年々増えています。良いことですが、助成金も競争が激しくなっていますし、寄付される食材も減ってきているな、という実感もあります。
特に最近は物価高の影響もあり、活動には常に不安がつきまといます。
てんぐカフェが今後も活動していくための資金として、今回の10万円は心強い支援でした。

サンクゼール財団の助成金で、ガソリン代をまかなえたのもありがたかったです。
飯綱町はお店が少なく、買い物は町外に行くことが多いんです。活動の度に買い出しは必要なので、地味に負担になってきます。
あとは、消耗品の購入にも活用しています。てんぐカフェでは、会場に来られない方向けにお弁当をつくりお届けしているのですが、その使い捨ての食品容器の購入に使用しています。

てんぐカフェの活動を通じて、ボランティア側も良い刺激を受けています。子どもたちが「おいしい」といって食べてくれるから、張り合いがありますよね。
そんな活動を今後も続けて、さらに広げていきたいです。

お弁当づくりの様子。
できあがったお弁当は、飯綱町社会福祉協議会の職員によって各家庭に配布されます。
「今日はお弁当の日だ!」と、家から飛び出して受け取りに来る子どももいるそうです。

おわりに

寺島さんが語ってくださった言葉の一つひとつには、地域の子どもたちへの深い愛情と、世代を超えたつながりを育もうとする深い想いが込められていました。

民泊での経験から始まり、子ども食堂の立ちあげ、そして「歩いて行こうてんぐカフェ」へと広がる活動は、地域の課題に寄り添いながら、柔軟に形を変えてきました。
特に印象的だったのは、「将来、てんぐカフェで食事をしたことがふるさとの思い出になってほしい」という言葉。子どもたちの心に残る記憶を育てたいという願いは、地域の未来を見守る、温かなまなざしの表れだと感じました。

これからも、食を通じて人々がつながる地域の居場所として、てんぐカフェが広がっていくことを願っています。