第1回助成事業 助成団体へのインタビュー。活動に対する想いをお聞きしました。(中高生・若者ほっとキッチン・無料学習塾)

こんにちは、サンクゼール財団です。2025年10月25日に、第1回助成団体の一つである「中高生・若者ほっとキッチン・無料学習塾」(長野県長野市 以下、ほっとキッチン)を訪問しました。

今回は、代表の小林さん、ボランティアスタッフの高戸さん、穂苅さん、和田さん、中山さんに、助成金をどのように活用されているか、今後の取組みの方向性などについてお話をお伺いしました。
また、当日学習支援ボランティアで参加していた、信州大学の学生さんにもインタビューさせていただきました。

中高生・若者ほっとキッチン・無料学習塾 概要

【主な活動地域】
長野県長野市(会場:長野市中部公民館第五地区分館)
【開催日時・活動内容】
第一土曜日 10時~12時 絵画教室「絵遊び」・学習支援
第二土曜日 10時~13時 学習支援、若者の居場所(ゲーム、将棋、ギター等)、会場での食事提供、食材・弁当配布
第三土曜日 10時~12時 学習支援(不定期)
第四土曜日 10時~13時 学習支援、若者の居場所(ゲーム、将棋、ギター等)、会場での食事提供、食材・弁当配布
【参加費】無料
【WEBサイト】
こども食堂のおばちゃんのコラム | まいぷれ長野の少し役立つコラム| まいぷれ[長野市]

【お話をお聞きした人】
左から、高戸さん、小林さん(代表)、和田さん、中山さん

活動を続けるための工夫

ほっとキッチンさん:はい。懇意にしている八百屋さんからはねだし品を安く譲っていただき、ひとり親家庭や困っている家庭へ野菜や果物を配布しています。今日もその購入費用の一部に助成金を使わせていただきました。
野菜や果物は、ほかにもJAさんの支援事業を活用したり、ご近所さんからもいただいたりします。

ほっとキッチンさん:食料を保管している倉庫は、ここから車で5分程のビルの一室の一角をお借りしています。 今日は倉庫から、かご3つを持ってきました。食材の他に調味料も必要となりますし、小さな冷蔵庫には冷蔵品もあるので、それらを倉庫から毎回持ってきます。
5階建ての4階で、荷物はエレベーターを使いますが人は階段を使いますし、会場まで運んでくるのは大変です。

公民館での活動のため、会場にほっとキッチンの備品を置いておくことができません
そのため、毎回倉庫から持ち込む必要があります

ほっとキッチンさん:先ほどお話しした、JAさんの野菜支援は、長年利用しています。他にもコンビニさんの支援で、クリスマスにプチケーキを出したり、近所のピザのチェーン店からピザをいただいたこともありました。
子どもたちには、四季の行事で季節を感じてもらいたいですし、外食でしか食べられないような物は、子どもがとても喜びます。
最近は、全国の子ども食堂が対象の支援は、子ども食堂の数が増えた関係で、中々採択されないことが多いです。 助成金は、使用用途が決まっていて、「野菜は良いけど配布用のお弁当を入れるビニール袋はだめ」というものもあるので、いろいろ使える方が助かりますが、今のところは、助成金によって買うものを決めてやりくりしています。

子どもたちの体験の機会を守りたい

ほっとキッチンさん:市の担当者と打ち合わせはしましたが、結局話はまとまりませんでした。
最近では、プールや登山などの学校行事がなくなったり、部活自体が、今後数年を掛けて廃止されるという話も聞きます。
学校でそういった体験の機会が無くなると、家庭での体験に頼るしかなくなり、家庭の状況によって「体験の格差」が広がってしまうように思います。家庭によっては、映画やお芝居、外食さえも高額で、子どもが経験できていないケースもあるそうです。

ほっとキッチンさん:民間の美術教室に通えないような子、もしそういう子がいるなら、ここでやらないかという話をしています。要望があって、そういう子がいればですね。
以前は、ここに来た子が「将棋をやりたい」と言ったので、将棋ができる人を周りに探したこともありました。子どもによって、抱えている問題ややりたいことはさまざまです。その子に合わせて、活動の方向性が決まっていくと思います。

訪問日が10月末ということもあり、参加者にはハロウィンクッキーが配られました
心のこもったプレゼントは、特別な思い出になるのではないでしょうか

学びと繋がりの居場所

当日は別室で、高校3年生に向けて、学生ボランティアスタッフがマンツーマンで数学の無料学習支援を行っていました。彼女は信州大学教育学部で特別支援教育を学ぶ大学4年生。定期的にほっとキッチンでボランティア活動に取り組んでいます。その学習支援についてもお話をお聞きしました。

――どのような経緯で、学習支援のボランティアをされているのですか?

大学2年生のころ、学習支援のボランティアをしたいと思ったんです。インターネット検索し、小林さん(代表)にお電話して、学習支援のボランティアを始めました。
今は、だいたい月1回くらいのペースで、こちらに学習支援ボランティアに来ています。

――2年生からボランティアを続けているのですね。何人くらいの学生さんに教えたのでしょうか。また、苦労された点があったら教えてください。

今までに、4人の学生さんに教えました。事前に教材や内容を決めるのではなく、学生さんが当日持ってきた教材に合わせて対応しています。なので事前に、「今この辺を勉強しているだろうな」と予測して、図書館で調べて準備することもあります。
苦労した点は、初対面で勉強を教えることになるので、距離を縮めるのが大変なことです。お互いの好きなものの話題から会話を始めるなど、工夫もしました。

――事前準備は大変ですが、マンツーマンで教えてもらえるのはすごく良さそうですね。ボランティアをして良かったと感じることはありますか?

塾とは違い、1対1でお互いのペースで進められるのは、ここの学習支援の魅力です。また、ほっとキッチンは、私のこともフレンドリーに受け入れてくれ、いろいろな人が声を掛けてくれます。学習支援で教えるということだけではなく、自分自身の第2の居場所にもなっています。

学習支援の様子(2025年3月撮影)

おわりに

小林さんの、「来る子どもによって、今後の方向性が決まる。」という言葉が印象的でした。
ボランティアスタッフの皆さんから活動内容を伺う中で、長野市内の子どもたちや学校の現状、「体験の格差」といった社会的な課題、そしてそれに対してどのように考え、行動されているかについても、多くのお話を聞かせていただきました。

ほっとキッチンのボランティアスタッフは、長年参加されている方が多く、入れ替わりが少ないそう。しっかりとした信頼関係を築きながら、子どもたちの状況に常に目を向けているからこそ、社会の変化や一人一人の背景に寄り添った支援が可能になっているのだと感じました。

また今回は、学習支援に参加していた学生ボランティアにも、お話をお聞きすることができました。
ご自身も卒業論文の執筆中という事で大変な時期でしたが、「子ども食堂は、自分にとっても安心できる居場所。フレンドリーな雰囲気にいつも助けられています。」とお話ししてくれました。
子どもたちだけでなく、そこに関わる人々にとっても、子ども食堂は「もうひとつの居場所」になっているのだなと感じました。

サンクゼール財団はこれからも、現場で生まれる多様な取組みやお声を大切にし、地域に寄り添う助成事業を目指します。